まけまけいっぱいの愛を

力の限りに、“無意味・無作為に一生懸命な様子”を書き綴っていきます。 好きな言葉は、「どんぶり勘定、くんずほぐれつ、十把ひとからげ」です。

パワースポット鶴橋

数年前に、知人の結婚式の帰り、同じように結婚式の帰りであろう若く美しい女性が隣の席に座っていた。

なんとなく僕は、その人に話しかけたくなり、僕の思い込みでなければ、その人も、僕と話がしたそうであった。冠婚葬祭の帰りに一人でいると無性に人恋しくなるものなのかもしれない。

だが僕は、今まで知らない女性にいきなり話しかけたことがない(無かったと思う。多分)。なので、この時も最後までだんまりを決め込んで、アルコールの上気に浮かんで、ふわふわと漂っていただけであった。

 

彼女は鶴橋で降りて行った。

 

その時に、僕は「ああ、鶴橋はパワースポットだ」と訳の分からぬ結論に至ったのだった。

 

この駅は、近鉄と接続しており、奈良・伊勢志摩・名古屋へ行くことが出来る。

 

別の路線、特に別の会社と繋がっている駅は、乗降者数が多く、車両のドアが開いた一瞬の間、異なる空気感や別種のエネルギーが入り交る、“移動式るつぼ空間”となる。

今、調べてみると、この感覚はあながち間違いでなく、鶴橋‐玉造間が、線内で最も高い混雑率であるという。

東京の、しっちゃかめっちゃかの鉄道路線が、僕は大好きなのだが、きっとこういうことなんだろう。

 

ただ、僕も元々は、電車も走っていない、田舎の小僧であったので、初めて大阪に来た時、同じ路線・同じホームであったのにも関わらず、急行への乗り換え、ということが出来なかった。

大学の入学式会場へ着いた頃に、ちょうど式が終わった、という思い出がある。その入学式の晩、鶴橋駅に行った。

僕はボーっと歩いていたので、おじさんにぶつかりそうになり、「すいません」と立ち止まると、そのおじさんは「堪忍!」と言って身をかわして歩き去っていった。

この「かんにん!」が強烈に耳に響いた。焼肉の匂いに身を包まれながら、「ここは大阪なんだ」と、高揚感と、寂しさが一緒に襲ってきた晩であった。

そして、調子に乗って生肉をガツガツと食べ 、翌日から、大きく数日体調を崩したという、そんな新生活の始まりであった。