マクロとミクロ
新宿駅に鈴なりに連なる路上生活者と、あたかも彼等を守るがごとく、一定の間隔を置いて座り込む易者達。赤髪の少女が何かを聞いている。黒髪の女性はその前で我関せずと、自ら編んだ詩集を手に持ち、佇んでいる。アフリカの、どこかの国から来たのか分からない人達がプラカードを手に、拙い日本語で募金を訴えている。
去年のことだが、夜中に都庁に赴いたら「身分証を提示せよ」と警備員。その当時の僕は自らを証明するものを何も持っていなかった。
あれだけ人がいるにも関わらず、駅から家に着くまで、誰とも何にも話をしなかった。当たり前のことではあるのだけど、なんとなく、砂漠に砂を投げるような、空虚で茫漠たる気持ちになったのも事実だ。